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高等学校における教科「情報」の必要性

 高等学校における教科「情報」の教育内容は、情報教育の初期の段階であるため、生徒の実態に合わせてコンピュータの操作方法やアプリケーション・ソフトウェアの使い方なども併せて指導しています。このため、これらが情報教育であると誤解されている部分がありますが、これは情報教育の本来の目的ではありません。情報教育は、情報の本質を科学的に追求し、それを情報技術や知恵として身に付け、社会の中で如何に利活用していくかを追求する学問です。
 情報教育は児童生徒の発達段階に応じて、小学校・中学校・高等学校でされる必要がありますが、特に高校生は、義務教育で習得した学力を基盤に、科学技術や社会性を深く学習できる年齢にあります。この時期に、教科「情報」をすべての生徒に対して必履修科目として学ばせることは、以下の観点からきわめて重要であると思います。

1)小中学校で学んできた内容の体系化とその理解

 小中学校では、現段階では体系的に情報を学ぶことはできていません。高等学校段階では小中学校で断片的に学んできた情報の体系化を図ることが必要で、体系化して初めて情報というものの全体像が明らかになり、それに対する興味関心と理解も深まり、それが情報社会を生きていく真の力となります。このことは、情報の専門家だけでなく一般利用者としても大切なことです。  

2)情報ネットワークを介した、表現・コミュニケーション能力の育成

 女子高生のポケベル利用に端を発した、現在の携帯文化は、若い高校生たちが作り出したものですが、かれらの言語能力も含めてさまざまな問題を含んでいます。情報通信ネットワークやコンピュータなどにより高度に情報化された社会における表現やコミュニーション能力を、自己と他人、社会を意識できる高等学校段階で積極的に育成することは、社会的要望でありかつ、健全な情報文化を育むために必要です。  

3)情報化社会をリードできる人材の育成

 情報化社会をリードできる人材の育成は急務で、社会からの要請は大きいです。また、国際的な競争の中でも日本は他国に引き離されようとしています。情報関連の人材は、従来の理系・文系の区別なく幅広い視野が要求されています。進路を具体的に考える高等学校段階で、すべての生徒に情報教育を実施することで、将来職業として情報分野で活躍しようとする幅広い人材の発掘が可能となります。  

4)情報倫理の論理的・科学的理解

 情報倫理教育は、小学校から必要ですが、科学技術や社会性を深く学習できる年齢ある高等学校段階で、道筋を立てて論理的に理解させることが、情報社会を健全に発展させる大きな要素となります。また、コンピュータやネットワークについてわからないが故に、コンピュータの世界は何をしてもバレナイ世界だと錯覚してしまっている現状があります。コンピュータの世界を科学的に理解させることで、情報倫理上の問題の解決につなげることができます。  

5)変化・発展し続ける情報社会を生きる自己学習力の育成

 急速な技術革新で、人々は学校教育で学んだことが一生涯通用しない時代になっています。これは情報分野だけではありませんが、特に情報分野ではこのことが大きな問題になっています。半義務教育化した最終学校としての高等学校段階で必履修科目として教科「情報」を学ばせることは、変化・発展し続ける情報社会を生きるための自己学習力を育成するという大きな目的を持っていると考えます。